「多様な意見」はなぜ正しいのか 衆愚が集合知に変わるとき

「多様な意見」はなぜ正しいのか 衆愚が集合知に変わるとき


多様な問題解決のためのツールを持つ集団がいかに集合知として個人の能力を超えるのか、が分かりやすく説明されている。軽快な語り口と、(奥さんのレビューによる?)分かりやすい例で読んでいて飽きない。

以下、なるほどと思った部分のメモ:

・パート1 ツールボックスを分析する
 ー第一章 多様な観点ー我々は事柄をどのように見るか
   ・「サムトゥフィフティーン」という一見複雑なルールのゲームと
    「三目並べ」は実は同じゲーム
      ーサムトゥフィフティーン:1から9までの数字が書かれたカード
       を机の上に並べ、相手と交互に数字を取り合って合計が15に
       なるように競うゲーム
 ー第二章 ヒューリスティックー逆のことをすべし
   ・ヒューリスティクとは次のような(問題解決のためでなく)既存の
    情報を整理するようなものも含まれる。
      ー72ルール:年利x%の複利で投資を行った場合総額が2倍に
       なるまでの年数はおよそ72/x年である。
   ・ブレインストーミングから始まる意思決定は、「焼き鈍し法」と
    同じヒューリスティクを使っている。

・パート2 多様性の恩恵ーツールから組み立てる
 ー第六章 多様性と問題解決ーダーウインの核心
   ・あるツールを使ってローカルオプティマムになっていても
    異なるツールを持つ人にとってはローカルオプティマムに
    ならないことがある。
     ー車の燃費予測:「車高で判断」「ホイールベースで判断」
     「空車重量で判断」それぞれの順位ごとに燃費を並べると
     ギザギザは違ってくる。
   ・多様性が能力に勝る
     ー条件1:個人ではグローバルオプティマムを見つけられない
          難しい問題
     ー条件2:ソルバーたちは十分賢いこと
     ー条件3:グローバルオプティマムでない値が最低一人の
          ソルバーに取ってローカルオプティマムでないこと

・パート3 多様な価値ー利害関係が(それとも)?
  ー第九章 多様な好みータパスがある理由
    ・好みが合理的であるとは:完全で推移的な場合
      ー完全:どんな二つの選択肢にも順序が付けられること
      ー推移的:サイクルしないこと
  ー第10章 好みの寄せ集めー4つのそれほどではないががっかりさせる結果
    ・アローの定理:すべての好みを考える場合、合理的な好みを持つ集団の
     集団的好みの順序として「意見の一致性」「他の選択肢からの独立性」
     「独裁的個人がいない」を満たすものはない。
    ・一次元なら好みのサイクルは発生しない。
    ・プロットの勝者不在の結果:二次元以上では、一対一の投票で必ず
     勝てるような選択肢は存在しない。