皇帝の新しい心

皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則

※20年前の本ではあるが、私的GW課題図書として読んだのでメモしておく。

誰もが直感的には違和感を感じることをひたすら突き詰めた結果を
ひとつのテーマに沿って数学、物理、哲学を駆使してまとめたすごい本。
ひとつのテーマとは「人間の心」とは何か、ということ。

違和感を感じる例として以下のようなものが挙げられていた。

 ・人の脳が計算機でシミュレート可能なら、
  計算機は心を持つのか?
  (yesと答えるのは「強いAI」という立場といわれる)

 ・物理法則が時間に対して逆転できるならどうして宇宙は
  ブラックホールと同じようにホワイトホールがたくさんないのか?
  (どうして宇宙のエントロピーは初期に低かったか?)

 ・量子力学にはU(ユニタリ発展)とR(測定による波動関数の収縮)
  があるが、測定を行うのは誰か?

 ・Rによる測定は時間反転すると不自然になる。
  「光源から光子が放出される確率が1/2」
   →「光子を測定したが、光子が放出される確率は1/2だった
     (1と分かりきっているにも関わらず)」

 ・どうして、量子力学と一般相対性理論は両立しないのか?

そして、量子力学と一般相対性理論が両立しないのは、よく言われているように
相対論の方を修正するのではなく、(それがどんなものかは分からないが、)
量子力学を正しいものに修正するべきなのではないか、と述べている。
例えばそれによって

 ・ブラックホールが情報を消滅させる代わりに、Rが情報を
  生成させ、位相空間上の流線が埋め合される。

ようなことが可能なのではないかと(かなり型破りな考え方であることを
強調した上で)提案されている。

この本の初版から20年たってこのあたりの話題はどう扱われているんだろうか…。
この本の中には、そういった問題を科学者は物理法則でなく与えられた
「初期値」の問題として興味の対象外してしまうことが多いと書いてあったが
最近はどうなのだろうか。

厚さといい扱っているテーマと言い10年前に読みたかった。今読んでも十分面白いけど。
10年前は7000円もする本は買えなかったなー。